あるプロ野球投手の自主トレ

 1月はプロ野球選手にとっては、自主トレの期間です。私の施設でも、今シーズンの活躍のために、多くのプロ野球選手が連日トレーニングに励んでいます。今回は、その中から「カーツ」をトレーニングに取り入れているある投手とのやり取りをご紹介したいと思います。

 その投手は3年前まで中継ぎエースとしてフル回転していましたが、ここ2年は実力を発揮できないでいました。そこで、3年前の一番いい時のフォームと昨年のフォームを比較したところ、いいときに比べ明らかに重心が高く、体重移動の下半身の使い方が崩れていることが分かりました。球速自体は変わっていないにもかかわらず、何故かボールにキレがなく「空振りが取れない」「きわどいボール球を簡単に見逃される」その原因はそんな単純なことにあったのです。
 では、そうなってしまったもっと根本の原因は何か、使い方自体へのアプローチに加えて、その根本原因の改善がこのオフに取り組むべき課題になります。体型の変化、ここ2年のトレーニング内容、各種チェック、生活習慣などから推察した結果、フォーム悪化の原因として次のの項目が挙げられました。

  1.怪我によるトレーニング不足から生じた体重・体脂肪の増加(82kg→90kg)
  2.「1」に伴う崩れた下半身の使い方の定着
  3.「2」とトレーニング不足に伴う下半身、体幹の筋力低下
  4.柔軟性の低下

 そして、以上の4項目の改善のために必要な課題として次のことを掲げ、トレーニングプランを作成しました。
  1.下半身の使い方の再教育
  2.「1」を補助するための筋力向上
  3.体脂肪減のための食生活の改善
  4.体脂肪減のための筋量増加(基礎代謝のアップ)
  5.合理的な投球動作獲得に必要な全身の筋力、筋機能の向上
  6.合理的な投球動作獲得に必要な柔軟性の向上
  7.有酸素運動による脂肪燃焼

 このようなやりとりをして、トレーニングを開始したのは新年になってからで、現在半月ちょっとです。2月1日のキャンプインまでの1ヵ月間ではとうてい改善は不可能ですが、短期間で成果をあげるために、下半身のみカーツを使用したトレーニングを最終種目として行なっています。現時点ですでに体重は3kg減、下半身の筋量は12月に購入したズボンがキツイ状態になっています。そして、面白いように変化しているのが柔軟性です。毎日触るたびに少しずつ向上していて、柔らかくなってきたというよりは、弾力性が戻ってきたという感じで、干からびたゴムが新品に再生していくかのようです。フォームに関してはまだブルペンでの投球練習が3度だけなのでこれからです。キャンプに入り、身体が仕上がるにつれてフォームも出来上がっていくことでしょう。
仕上げる目処は開幕です。目標は下半身の使い方を完成させること。これは筋力の目標でもあります。そして、3年前より筋量を増した82kgで開幕を迎えること。おそらく、これが一番のキーポイントになるでしょう。